子供の頃から何くれと本を読んできた人なら、わかると思う。
飽きではないが、多少、食傷気味になり、何かお勧めや指針のようなものがあれば覗いてみたり。コレクションでもないが、全制覇、全読破のような定量的な目標があれば、励みになったり。
また、本来楽しいハズの「選ぶ」行為にも疲れたとき、深く考えないで、しかも、安心して及第点以上の本の一覧があると、忙しいスピード時代の現代において、とっても有難い・・・などと考えるときが。
そこで、当世、お勧めリストを眺めてみる。
まず、巷でよく耳にするのは、「新潮文庫の100冊」。教科書にのっていそうな、名前はきいたことあるぞ、と云う本がずらりと並ぶ。安心、安心。
ビジネスマンなら、日経系、ダイヤモンド、東洋経済、あたりで、「新入社員が読むべき50冊」「経済を知る50冊」「国際派が読んでいる50冊」など。知的生き方文庫からもこんなものが。無難、無難。
私は、これ否定しないが、ベストセラーの本ばかりを読んでいるのと、そう変らず。言い換えれば、安定しているが面白みに欠ける。皆が読んでいる=差別化できない。悦に浸れない。
昨年末から今年頭にみたのは、「宮崎駿さんが選ぶ子供のための50冊」。子供と共に読めて、大人にも十分楽しめる基本の推薦書。一瞬、通っぽいが、これも同じ考え、期待で手にとった方は多いのではないだろうか。
天邪鬼会の会員としては、面白くない。燃えない。自分に酔えない。
なので、自然、選書のリストも、マイナーなものに目が行く次第。これも独自のキュレーションなのだ、と自己満足と云う名の湖を一人カヌーで進んでいる。
一例をご報告・ご案内してみたい。
福田和也に「作家の値うち」と云う書評がある。
現存の生きている作家の代表作、話題作、新作(当時)を点数づけする。ばっさばっさと斬ってゆく。もちろん、その評価・評点自体に是非はあるだろうが、個人的には根拠に納得でき、単純に嗜好もあったのか、うんうんと肯けた。
ベストセラー作家で評点の低い人は、無視するか、甚だ立腹、失礼千万の楽しい試みである。
その全作品リストの高得点の本で、未読のものが結構あり、これは読まずにはおれん、とコピーをとって持ち歩いた。70点以上のものを全品漁った。中には、絶版もあり、それがたまたま復刻したり、古本屋でであったり、「探す」作業もとても楽しめた。
次に目をつけたもの。
池袋のジュンク堂書店1階で手にしたリーフレット、「知に歴史あり」。教養新書合同フェア記念の企画である。
岩波書店、中央公論新社、講談社、のライバル3社が互いに認め合う新書の代表作を列挙したもので、これもそそります。
加えて、せこいが楽しい制約を自身に課してみた。
すなわち、ブックオフの100円コーナーや街の古本屋のワゴンセールなど、安い埋もれた中から探し出している。
現在も続くこの探索。見つかるごとに印をつけてゆくと何とも嬉しく満足感がひしひしと・・・。
既に古典、名著と呼ばれ名を知る本から、全く初めての名称、分野まで幅広く、懐が深い。新書ならではのアカデミックな世界に浸かるには、お勧めしたいリストだと思う。
そのリストの中からの出会いがあった。
TV、声に出して読みたい日本語の斉藤孝先生の新書、「読書力」を100円で買い読んだ。コストパフォーマンスが高いぞ、これは。
読書は、スポートと同じでトレーニング、鍛錬が必要である。逆に、個人差あるものの読むほどに「力」がついてくる、という持論を展開している。その通りだと思う。
その巻末に、先生お勧めのリストがあり。殆どは、「新潮文庫の100冊」に重なる古典が多く、既読だが、中には、「お、これは読んでおかんとな、と思いながら、読んでねーな」という気づきが多く、いいきっかけとコピーをとって、最近持ち歩いている。
100円でなくとも良いが、基本、古本屋での探索は同じ。
今、その中から買った、小林秀雄の「考えるヒント」を読んでいる。旧い言い回し、漢字使いも、どこか明治の香りがして、懐かしいというか、しっくりと読める。いわゆるエッセイの類だが、どの文章も機智に富んでいる。先生お勧めの、短い評論「人形」は確かに、多くの人に一読頂く価値があると思う。
ともあれ、ちょっとへその曲がった私の探索リストを常備しての古本屋巡りは今日も続いている。
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