「グロテスク」 桐野夏生 文春文庫を読んだ。
本作は、第31回泉鏡花文学賞、受賞作。
デビュー作『顔に降りかかる雨』が江戸川乱歩賞ののち、順調に書き続け、売れ続け、直木賞を『柔らかな頬』1999年に受賞。
以降も実(販売・売上)と華(受賞・評価)を備える日本を代表する作家である。
だから・・・というわけではないが、乱読、松川の好きな作家、十指にはいる。
言い訳? だが、売れているからではなく、事実、売れていない習作やミステリー以外のシリーズ(女子プロレスが舞台)もたまらない。
驚くべきは、長く、その質を維持しているばかりか、毎度、新たな面、新たな世界、新たな問題を読者のみならず、社会に世間に突きつけてくる高い視座を持ち続けている。
本作もその名の通り、グロでエロ、ブスな小説ではない。
ともすれば、男性が書くと問題の本質を別のところにもってゆかれるところ、同姓の女性が各ところに妙があり、説得力を感じる。
背景、題材と言われている、現実の事件「東電OL殺人事件」がもつ現代社会の闇を、小説という媒体をかりて更に深くエグりこんでいる。
多くの書籍はハッピーエンドではなく、むしろ、重い、暗い読後感を与えてくれる。
しかし、一方的に絶望しているか、というとそうではない。
それは、実は、どの人間でも根源にもつ、重さ、暗さ故に、ある種の親近感、納得感があるためか。
受賞歴の多様さが示すように、ともすれば、玄人うけする文章かもしれないが、しっかり、初めての読者も魅了する技量をそなえている。
読んでいない方、どの本からでもいいが、是非、どうぞ。
新しい自分に出会えるかもしれません。
(・・・と書いたものの、初心者にお勧めは、「顔に降りかかる雨」「天使に見捨てられた夜」という初期作が無難かもしれません・・・)
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