東 直己 「残光」 上下巻 ハルキ文庫を読んだ。
北海道を拠点にし、話の舞台も北海道。ひたすら北海道の人。
探偵シリーズ、フリージア、ですでに一定の評価を得ていた、彼の日本推理作家協会賞受賞作 ということで。
駄作の匂いぷんぷん。まぁ、一作は読んでおくべし、と買ったものの本棚に眠ること数年。
主人公のイメージが、高倉健に重なることで、ようやく手にとった。
結果、非常に面白い。素晴らしい。
落ちこぼれで、基本、ダメな人々が、たまらなくいいヤツにみえてくる。
お上、公の腐敗、醜悪が、フィクションではなく、実話のように思えてくるリアリティ。それを可能にしているテンポと早い話者の交代。
手練れである。
健さん、と云うより、拙バイブルである映画の 山中貞雄 『河内山宗俊』にみる、無私の愛を当り前のようにもち、命をかける、無頼な面々にかさなってくる。
得にもならないこと。むしろ、リスクと損ばかりのことに、命をかける理由は。
普通は、ない。
云うなれば、それは、「義」とでも表現する、厄介なものだ。
今回、個人的にしびれたのは、主人公、健三よりも、むしろ、周辺のやくざ、便利屋、ブン屋、ラジオ・ジョッキー、おかま、などなど・・・。
協力する面々の方に、より強い「義」を見、カッコよさを感じた。
おそらくは、これら脇役の想いの積み重ねが、作品の正義感を重厚なものにしており、作者の意図、計算の範疇なのだと思われる。
連続して読むべきではなく。
理不尽な怒り、気だるい気分、を吹き飛ばしたいときにうってつけの作家をみつけた。
爽快な読後感とともに、本当に得をした気持ちだ。
今、幸福感でいっぱいである。
付け足しのようだが、確かに、主人公は健さんそのものだった。
合掌。
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