成りたろう 本 映画 切手 を語る: 嬉しい誤算! 「残 光」 東直己

2014年11月23日日曜日

嬉しい誤算! 「残 光」 東直己



東 直己  「残光」 上下巻 ハルキ文庫を読んだ。

 


 

北海道を拠点にし、話の舞台も北海道。ひたすら北海道の人。

 

探偵シリーズ、フリージア、ですでに一定の評価を得ていた、彼の日本推理作家協会賞受賞作 ということで。

 

駄作の匂いぷんぷん。まぁ、一作は読んでおくべし、と買ったものの本棚に眠ること数年。

 

主人公のイメージが、高倉健に重なることで、ようやく手にとった。

 

 

 

結果、非常に面白い。素晴らしい。

 

 

落ちこぼれで、基本、ダメな人々が、たまらなくいいヤツにみえてくる。

 

お上、公の腐敗、醜悪が、フィクションではなく、実話のように思えてくるリアリティ。それを可能にしているテンポと早い話者の交代。

 

手練れである。

 

 

健さん、と云うより、拙バイブルである映画の 山中貞雄 『河内山宗俊』にみる、無私の愛を当り前のようにもち、命をかける、無頼な面々にかさなってくる。

 

得にもならないこと。むしろ、リスクと損ばかりのことに、命をかける理由は。

 

普通は、ない。

 

云うなれば、それは、「義」とでも表現する、厄介なものだ。

 

今回、個人的にしびれたのは、主人公、健三よりも、むしろ、周辺のやくざ、便利屋、ブン屋、ラジオ・ジョッキー、おかま、などなど・・・。

 

 

協力する面々の方に、より強い「義」を見、カッコよさを感じた。

 

 

おそらくは、これら脇役の想いの積み重ねが、作品の正義感を重厚なものにしており、作者の意図、計算の範疇なのだと思われる。

 

 

連続して読むべきではなく。

 

理不尽な怒り、気だるい気分、を吹き飛ばしたいときにうってつけの作家をみつけた。

 

 

爽快な読後感とともに、本当に得をした気持ちだ。

 

今、幸福感でいっぱいである。

 

 

付け足しのようだが、確かに、主人公は健さんそのものだった。

 

合掌。

 


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