成りたろう 本 映画 切手 を語る: 読書の幸せ  「森のなかの海」 宮本輝

2014年11月17日月曜日

読書の幸せ  「森のなかの海」 宮本輝


宮本輝 「森のなかの海」 上下巻 光文社文庫を読んだ。





一言、流石である。


毎日新聞編集委員 重里徹也 による解説が秀逸で輪をかけて嬉しかった。


曰く、我が意をえたり。


決して、幸福なお話ではなく。


むしろ登場人物は誰も、苦難や苦労、暗い過去をしょっていて、快復の片りんはみせるものの、最後まで必ずしも完全な復活までを書かない、語らない。


主軸の大きな謎も、最後は、その答えは永遠に解き明かされない、なほざりにおかれる。


それでいて、尚、読後に訪れる、仄かな希望の光。

包む幸福感が本当に心地よい。



人間は何故、何のために、生まれ、そして、死んでゆくのか?

哲学書、宗教書の趣をもち、かつ、答えを押し付けたり、導いたりはしない。


ただ、静かに問いかけるだけだ。



読者の誰もが、自身の半生や問題、悩みに重ねて、各々の答えを考えるように誘う。



そして、「読書」だけではなく。文章を通して、様々な先人の古典、釜飯、マロングラッセなど美味しいお話。葉巻の楽しみ方。中高年のはじめてのパソコン。陶器鑑賞、自然観察・・・。


これでもか、と、生きる楽しみへのヒントや誘いが仕掛けられていて、読み終えるや否や、実際に、そのどれかを楽しんでみたい、と思う方も多いはずだ。



これは、単なる小説ではない。



少し立ち止まって、人生の楽しみ方を思い出す。復習する。探す、、、、ヒントのつまった一冊である。




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