成りたろう 本 映画 切手 を語る

2019年9月28日土曜日

【本の世界】かわらない永遠の友情のお話 重松清 「カシオペアの丘で 上・下」


「カシオペアの丘で 上・下」 重松清 講談社文庫を読んだ。



2000年下半期の直木賞作家(作品「ビタミンF」)である重松清は、ドラマ、映画の原作で有名な「とんび」や「流星ワゴン」などで知られる。

氏の著作の多くは切なく、人間の弱さを描写し、厳しい運命に翻弄される人々を登場させる。
しかし、最後は胸が温かくなり、読む人に生きる勇気を与え、胸に小さな灯をともしてくれる。
それは、人生を大きく変えたり、シビアが現実を大きく改善させたりするものではない。
消し飛んでしまいそうなのだが、消えずに心の奥底で光り続ける。
そのような人間の本質的な強さ、しぶとさ、美しさのように思えてしかたがない。

この作品も期待にそぐわず、最後に暖かくなれるが、そこに至るまでの曲折は氏の得意の絶望や切なさや人間の弱さに翻弄されながら過ごすのである。
主人公だけではなく、サイドストーリーのように登場し絡む人々もそれぞれに罪や咎をかかえて絶望している。多くの人間は大小の差こそあれ何かしらの辛い想いを抱えていて、読者自身のそれを思い起こさずにいられない。
これも本書のはなつ翻弄の力かもしれない。

厳しい現実を抱えて生きている方、生きる意味そのものに疑問を感じている方、縁や運について疲れたと思う方。
是非一度翻弄されてみて欲しい。
そして読後にえた何かをもって立ち向かって欲しいと思う。
私もその一人です。

文庫本裏表紙の説明を共有します。
どうぞ、気持ちをもりあげてください。

【上巻】
丘の上の遊園地は、俺たちの夢だった。
肺の悪性腫瘍を告知された三十九歳の秋、俊介は二度と帰らないと決めていたふるさとへ向かう。そこには、かつて傷つけてしまった友がいる。初恋の人がいる。「王」と呼ばれた祖父がいる。満天の星がまたたくカシオペアの丘で、再会と贖罪の物語が、静かに始まる。

【下巻】
二十九年ぶりに帰ったふるさとで、病魔は突然暴れ始めた。幼なじみたち、妻と息子、そして新たに出会った人々に支えられて、俊介は封印していた過去の痛みと少しずつ向きあい始める。消えてゆく命、断ち切られた命、生まれなかった命、さらにこれからも生きてゆく命が織りなす、あたたかい涙があふれる交響楽。
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2018年9月16日日曜日

【本の世界】 真摯に生きるちょっとかわった友情のお話  三浦しをん 「まほろ駅前多田便利軒」



「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん 文藝春秋を読んだ。


三浦しをんの2006年、第135回 直木賞受賞作。
20才台女性の受賞はきわめて珍しい。

映画もそこそこヒットし、ここで準主役をした松田龍平が、後に映画で大ヒットする「舟を編む」にも主演している。

どちらもちょっとかわった仕事に懸命にとりくむ姿が描かれ、そこはかとない感動をよぶ。

わけありっぽいまほろ市(モデルは完全に町田市)駅前の雑居ビルに居と便利屋事務所をかまえる主人公と中学時代の知り合い(決して友達ではない)の奇妙な同居生活が舞台。

二人とも過去に傷や嫉みを持つが前向きに生きようともがく。
そして、忘れられればよいが、忘れられないコトに対して答えを探し続けている。

女性作家であるが男性の主人公の気持ち、心のひだをよく描けていると感心するが、これは、男性ではなく人間に共通するものなのだなと気づく。

底に流れる逃げることのできない重いテーマを軽妙なユーモアと少しホロリとする温かさで包みながら物語は進行する。

そして突然訪れる崩壊・・・。
しかし、読者の期待通り、それは逆転の希望につながってゆく。

個人的に長く本棚(読みたい本が常時20-50冊程度積まれている)にあったものを、思うところあって読んでみた。

期待通りの温かさと切なさにつつまれ、続編も是非読んでみたいと思う。

ちょっと疲れたときに元気をくれる一冊だと思います。
表紙のイラストも読後に、なるほどとうなずける素晴らしいトーンをもつ。

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2018年9月1日土曜日

【本の世界】 下町出身の日本文壇のエース  宮部みゆき 「ステップファーザーステップ」



「ステップファーザーステップ」 宮部みゆき 講談社文庫を読んだ。


『火車』(山本周五郎賞受賞)『理由』(直木賞受賞)はじめ、ヒット作、名作多数。
社会物、ミステリー、時代物と多様なジャンルをかき分ける、怪物作家。

日本の文壇の床の間をしょって立つといっても過言ではないと思う。

ネタバレだが、Amazonの内容紹介から引用すると。
中学生の双子の兄弟が住む家に落っこちてきたのは、なんとプロの泥棒だった。そして、一緒に暮らし始めた3人。
まるで父子のような(!?)家庭生活がスタートする。
次々と起こる7つの事件に、ユーモアあふれる3人の会話。
宮部みゆきがお贈りする、C・ライス『スイート・ホーム殺人事件』にも匹敵する大傑作!

氏にしてはライトな内容、かつ、多少設定に無理があるものの、最後はしっかりとホロリとさせるところは流石。

疲れていても、楽しみながら読める娯楽小説としてお勧めです。

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2018年8月27日月曜日

【本の世界】 安定した実力派  東野圭吾 「夢幻花」



「夢幻花」 東野圭吾 PHP文芸文庫を読んだ。


26回柴田錬三郎賞受賞の近作。

安定した面白さを保持しており、安心して読める。
分野、アイデアも斬新であり、知的好奇心もくすぐってくれる。

しかし、出世時の作品群の格調の高さ、驚き、斬新さをしる者にとっては、その高みとの比較から物足りなさを感じるかもしれない。

自殺と殺人、そして、過去の殺人事件が1本の線としてつながってゆく、その推理小説としての道筋は見事なもの。

被害者にとっては残念な事件、事故であるが、残った者(主役たち)にとって生きる希望を見つけることができ、読後の爽快感もみミステリ、推理小説であるにも拘らず、独特な感動をもたらす。

悲惨、悲壮の中に希望の光をともす、この作家の魅力は健在である。

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