「カシオペアの丘で 上・下」 重松清 講談社文庫を読んだ。
2000年下半期の直木賞作家(作品「ビタミンF」)である重松清は、ドラマ、映画の原作で有名な「とんび」や「流星ワゴン」などで知られる。
氏の著作の多くは切なく、人間の弱さを描写し、厳しい運命に翻弄される人々を登場させる。
しかし、最後は胸が温かくなり、読む人に生きる勇気を与え、胸に小さな灯をともしてくれる。
それは、人生を大きく変えたり、シビアが現実を大きく改善させたりするものではない。
消し飛んでしまいそうなのだが、消えずに心の奥底で光り続ける。
そのような人間の本質的な強さ、しぶとさ、美しさのように思えてしかたがない。
この作品も期待にそぐわず、最後に暖かくなれるが、そこに至るまでの曲折は氏の得意の絶望や切なさや人間の弱さに翻弄されながら過ごすのである。
主人公だけではなく、サイドストーリーのように登場し絡む人々もそれぞれに罪や咎をかかえて絶望している。多くの人間は大小の差こそあれ何かしらの辛い想いを抱えていて、読者自身のそれを思い起こさずにいられない。
これも本書のはなつ翻弄の力かもしれない。
厳しい現実を抱えて生きている方、生きる意味そのものに疑問を感じている方、縁や運について疲れたと思う方。
是非一度翻弄されてみて欲しい。
そして読後にえた何かをもって立ち向かって欲しいと思う。
私もその一人です。
文庫本裏表紙の説明を共有します。
どうぞ、気持ちをもりあげてください。
【上巻】
丘の上の遊園地は、俺たちの夢だった。
肺の悪性腫瘍を告知された三十九歳の秋、俊介は二度と帰らないと決めていたふるさとへ向かう。そこには、かつて傷つけてしまった友がいる。初恋の人がいる。「王」と呼ばれた祖父がいる。満天の星がまたたくカシオペアの丘で、再会と贖罪の物語が、静かに始まる。
【下巻】
二十九年ぶりに帰ったふるさとで、病魔は突然暴れ始めた。幼なじみたち、妻と息子、そして新たに出会った人々に支えられて、俊介は封印していた過去の痛みと少しずつ向きあい始める。消えてゆく命、断ち切られた命、生まれなかった命、さらにこれからも生きてゆく命が織りなす、あたたかい涙があふれる交響楽。
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