成りたろう 本 映画 切手 を語る: 10月 2019

2019年10月19日土曜日

【本の世界】 切ないが勇気をもらえる  北村薫 「ひとがた流し」





「ひとがた流し」 北村薫 新潮文庫を読んだ。


柔らかい、コワくないミステリーを書かせたら当代随一の作家。
時と人シリーズと呼ばれる時間軸のミステリー「スキップ」「ターン」「リセット」はドラマでも人気がある。
2009年、「鷺と雪」で第141回直木賞受賞。

その一方で、人間の致し方ない現実と生きて行く上でどうしようもない業を描く小説も多数あり。
切なく、悲しい結末であってもなぜか小さな温かさが残り、勇気をもらえる。

本書は離婚したキャリアウーマンと娘の日常と愛情を描いた「月の砂漠をさばさばと」の後継小説にあたり、朝日新聞に掲載された連作。

3人の幼なじみの女性が主役。
その母娘は娘が成長し受験をへて家を出る。
再婚した女性は連れ子である娘が父と血縁がないことを知り思い悩む。
そしてニュースキャスターの女性は未婚のまま母を看とり、仕事に生きる。
自身の人生の終焉で思わぬ伴侶をえることに・・・。

その女性の想い出にある紙をひとの形にちぎって川に流す行事が本の題名。
文庫本の表紙絵が素晴らしい。

作家を知る上で、著名な3部作の前に是非味わって欲しい秀作です。


ひとがた流しが自分の田舎の昔の行事のように懐かしく思えてきます。


【文庫本背表紙説明】
十代の頃から、大切な時間を共有してきた女友達、千波、牧子、美々。人生の苛酷な試練のなかで、千波は思う。
〈人が生きていく時、力になるのは自分が生きていることを切実に願う誰かが、いるかどうか〉なのだと。
幼い頃、人の形に作った紙に願い事を書いて、母と共に川に流した……流れゆく人生の時間のなかで祈り願う想いが重なりあう――人と人の絆に深く心揺さぶられる長編小説。



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2019年10月14日月曜日

【本の世界】 最後まで読んでも結局難解・・・  道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」

最後まで読んでも結局難解・・・  道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」

「向日葵の咲かない夏」 道尾秀介 新潮文庫を読んだ。


2011年「月と蟹」で第144回直木賞受賞する道尾秀介の大ベストセラー。
ブックオフで彼の名前で探すと必ずある文庫本。
すでに、5回連続でノミネートされており、本作も100万部を超えるベストセラーであったので満を持しての感があった。

この人の小説は一言でいうと難解である。
しかし、その難解さがページをめくることを面倒にするものではなく、むしろ、数々の裏切りにどきどきハラハラ、成るほど~と唸ってします。

でも、最後に納得感や満足感があるかというと、個人的には全くなく。
しかし、また手にとりたくなる。

小説家として「売れる」才能、売れる要素、売れる技術をもっている作家だと思う。

好みだろうが、村上春樹にある納得感があるほうが偉大なのか、ない今のままが独自の世界観があり他の追随を許さないのか。

もう何冊か読みながら考えてみたい。

【文庫本背表紙説明】
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。
きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。
だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。
「僕は殺されたんだ」と訴えながら。
僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

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2019年10月5日土曜日

【本の世界】 男性が読んでも懐かしい匂いがする  森絵都 「永遠の出口」


「永遠の出口」 森絵都 集英社文庫を読んだ。


『風に舞いあがるビニールシート』(かぜにまいあがるビニールシート)で第135回直木賞(2006年上半期)受賞する森絵都の自伝的小説。

氏のウィットに富んだ表現、味わいを存分に体感できる。
世代が近いこともあるだろうが、男性の私でも懐かしく、同感できるエピソードばかりで、青春期の屈折した気分は行動にした、していないの差はあるものの誰しもが抱えたことのある情感だと思う。

人間という生き物は弱く切ないが一方で真逆に図太く、身勝手で立ち直りがはやい。
人生に疲れたなと思ったら読んでみるといい。

その悩みが小さなことに思えるかもしれません。

「私は、<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった。」
誕生日会をめぐる小さな事件。
黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。
ぐれかかっていた中学時代。
バイト料で買った苺のケーキ。
こてんぱんにくだけちった高校での初恋・・・。
どこにでもいる普通の少女、紀子。
小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。

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