成りたろう 本 映画 切手 を語る: 【本の世界】女性の性? 人間の性?「紙の月」

2018年6月18日月曜日

【本の世界】女性の性? 人間の性?「紙の月」



「 紙の月 」 角田光代 ハルキ文庫 を読んだ。
25回 柴田錬三郎賞受賞作。


直木賞作家であり、ドラマ、映画の原作にとりあげられる、小説家。

本作も原田知世(ドラマ)、宮沢りえ(映画)になっている。

彼女の来歴で、多くの編集者や久世光彦に「明るい未来」を予感させる作風への変更を進められている。
しかし、彼女の小説の主人公は、犯罪者であり、影があるが、しかし、根っからの悪人ではない。

むしろ、とりまく人間の多くは、法を犯してはいないが、性根が腐っていたりする。

読了しても、決して幸福感はない。
しかし、そこはかとない安堵に包まれる。

ハッピーエンドが好きな私も、なぜか嫌いではない、不思議な気持ちになる。

今回も主人公は、不幸なわけではないのに、自ら破滅へと進んでしまう。

その先に待つものが不幸とわかっているにも拘わらず、進んでしまう。

読者は、ときに心配になり、ときにイライラとする。

最初に犯罪をおかしたときに、発覚してしまえば、それまでだったろう。
しかし、発覚しないことで、少しづつ狂いだし、歯車が悪い方へと向かってしまう。

人間は、だれしも、人生、100パーセント、完璧、少しの曇りや恥部はない、というものはいない。

誰もがもつ暗部が突き進むこわさ。

明日は我が身、とはいわないが、誰もが陥る可能性のある世界を描く。

ひょっとしたら、読者は、よい世界を疑似体験することや、応援するために、小説、ドラマ、映画を求めるのだが、真逆に、悪の世界を疑似体験することにも、ある種の快感や期待? をもつ生き物なのかもしれない。

幸せではない、しかし、人間とはどういうものか。
暗い側面からみせてくれる。

それは、明日のあなたや家族の未来かもしれない・・・。

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