成りたろう 本 映画 切手 を語る: 4月 2018

2018年4月30日月曜日

【本の世界】無冠の帝王 「 Cの福音 」 楡周平



「Cの福音」 楡周平 宝島社文庫 を読んだ。


大手企業の社員が上梓した本が、いきなりベストセラーになった。

しかも・・・?! 宝島社という小説界ではメイン通りではない出版社から。

また、ミステリーとスリラーを足して2でわったような味わいをもつ、ハードボイルドは、読みやすく、面白い。
主人公が決して善人でいい奴でないのもいい。

だから、だろうか。
この作家はいまもって無冠である。

売れているから、よい、とはいわない。
しかし、売れるか否かは、作家として、読み物として、重要な評価指標であるはずだ。
読者が評価しているわけで。
せめて、読み手側の目線である、本屋大賞もとってもおかしくないと思う。

好みの問題もあろうが、賞レースは摩訶不思議なものに思える。

主人公は知性があり、体力もある。
なにより、それらのものを得て、維持するために、努力を惜しまない。
正義のヒーローになってもおかしくない人生を送っていた。

しかし、彼の人生は暗転してしまう。
経済的にはどん底ではないが、少なくとも人生を楽しみ、歓びいきてゆく道はたたれてしまう。

自身でも気づかなかった、心の奥底に、身体の芯の奥深くに眠っていた、真の資質にきづいてゆく。
それは黒く、重く、反骨心に満ち、そして・・・。


ハードボイルドは痛快なだけで、品格が低いとみられがちだ。
そして、この小説でも、そんな阿保な、そんなにうまくゆくはずがない、と思う読者もいるかもしれない。わかっていて楽しむもよし。

しかし、ビジネスマンの端くれである私 には、ひとつひとつが、荒唐無稽なではではなく、しっかりとしたロジックと理屈、理由に支えられていて、現代社会でもかような裏の仕組みが存在していてもおかしくないとさえ思いながら読んでしまった。

その時点で、この小説は、私にとっては、ハードボイルドではなく、ビジネス書の色合いを帯びてくる。

結果論ではなく、現在の作者は、ハードボイルドの域をでて、経済小説の分野にシフトしている。
既に、デビュー当初から本質的には、こちらの世界を意識してプロットを考えていたのかもしれない。

ブックオフで作者の作品はみつけることができる。

是非手にとってのぞいてみてほしい。

新しい世界が開けるかもしれない。

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2018年4月23日月曜日

【本の世界】訪ねてみたい 「 藤沢周平が愛した風景(庄内・海坂藩を訪ねる旅) 」 山形新聞社 編



山形新聞社 編 「藤沢周平が愛した風景(庄内・海坂藩を訪ねる旅)」 祥伝社学黄金文庫 を読んだ。


藤沢周平の故郷、山形県庄内地方の鶴岡は、丸谷才一、藤沢周平、佐藤賢一という直木賞作家を輩出している文学の都だそうだ。

地元ではファン、愛読者をこえた支持者が多い。
同じ文才に関わる、新聞社である、山形新聞社もそのひとつ。いわば身内の立場から藤沢作品と庄内とのつながりを紐解いて行く書である。

架空の藩である海坂藩、その内外の山河、寺社仏閣、街並み。
そして郷土の風土と料理は、庄内そのもの、もしくは模したものばかりである。

名前こそ違えど、明らかに、この川筋を歩き、あの山を眺めたのだろう、と思われる街を歩く、ルポでもある。

地元の人にとっては誇りであり、郷土の良さを残し伝える資料でもあり。幸せな体験ができる、かの地の人々が羨ましい。


とまれ、我々も、同じ日本人、民族として想いを共にできる。

郷愁にかられたら、是非に手にとって欲しい書です。

インターネットが普及した今、検索すれば、この地の情報や画像、昨今では動画へも簡単にアクセスできます。



しかし、我々、人間が肌で匂いで、そして、その道程における疲労から感じとれる感覚は、決してインターネットではえられないものです。

足を運びたいものですね。

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2018年4月16日月曜日

【本の世界】若い人に読んでほしい 「 日本の戦歴 パールハーバー(真珠湾奇襲攻撃)  」 


 


平塚柾緒 「日本の戦歴 パールハーバー(真珠湾奇襲攻撃)」 学研M文庫 を読んだ。



日本の外務省、外交官が時世の重み、状況をよめず、レベルの低いしかし重篤なミスを重ねて、攻撃後に最後通告(宣戦布告に準じる文書)を手渡すことになり、世界中から後に糾弾される。
しかし、既に、米諜報部・暗号解読部の活躍で奇襲の可能性を上層部は知っていた。
実際、寸前まで停泊していた空母二隻「エンタープライズ」「レキシントン」は湾外に退避しており難を逃れている。
よって、戦争回避の国内世論を引き出す為に、軍部への情報提供・指導をしなかった・・・。

これが、本件を題材にする書籍、テレビの特集番組などで、謎だ、真実だ、と話題になる。

本書ではその辺りは、「謎」のまま放置し重きをおいていない。

攻撃に参加し現在生存する方へのインタビューや資料、史実を元に「現場」で何が起こっていたかを丹念におう。

政府、軍部、そして、天皇陛下の心の揺らぎ、苦悩、葛藤。東条英機よりも松岡外相の暗躍、罪の重さと共に、山本五十六大将の決意。
そして、支えない外務省上層部にひして、しっかりと役目を果たした領事館の面々の活躍と、攻撃直後から帰国まで。

攻撃自体の成功可能性が低く、実施自体の決断までの道と極秘情報を守っての訓練。
米ハワイ軍部の失敗、ミスの連続による行幸。

そして、各攻撃部隊の攻撃の詳細。日本側にも多くの戦死者、捕虜第一号、など被害が思いのほか大きかった事実。
米国側の混乱、大被害と果敢な応戦の数々。

これまで知らない攻撃の真実と史実を知ることができる良書である。



憲法九条の是非を問う現代、かような戦史もしっかりと、若い層を中心に知る、共有しておくことが、より大切になる。

戦争は絶対にダメだ! と無教養に叫ぶ前に、避けたいけれども避けられない事態や、リスクヘッジするための施策、など大きな視点をもって欲しい。

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2018年4月9日月曜日

【本の世界】 切ない幸福感 「なつのひかり」 江國香織


江國香織の「なつのひかり」 集文社文庫 を読んだ。





江國香織は、私と同じ歳の直木賞作家です。

彼女の本は、いつも、読む人を幸せにする。

この小説は、
「私と兄をめぐって、現実と幻想が交錯、不思議な物語が紡がれて行く。シュールな切なさと、失われた幸福感に満ちた秀作。」

だそうで。

まさしく、その通り、大きな感動や涙を誘うのではないが、そこはかとなく、ふんわかとした温かさを感じることができる。

その一方で、人間の切なさやどうしようもなさが、文字通り、切なく胸に残る。

とおり一辺倒の物語にあきたあなたにお勧めです。

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