成りたろう 本 映画 切手 を語る: 9月 2014

2014年9月20日土曜日

気がつけば、動物ばかり・・・ 「象の背中」




秋元康の新聞連載小説 象の背中(扶桑社文庫) を読んだ。


ふと気づくと、全く意図せず、ここのところ、動物の名前の入った小説ばかり読んでいた。


遡ること、「象の背中」「ソロモンの犬」「震える牛」「羊の目」・・・。

本当に偶然です。


と云うことで。



象は、死ぬときに、群から離れ、仲間に背を向けて去り、一人(一頭)になって最期を迎えると云う。

人は、死が近づいたとき。

若くして、それを告知され知ったとき、どういう道を辿るのか。

どのような、背中、を、身近な者に見せるのか。

主人公は働き盛り、男盛りの48歳 で余命半年の告知をうけ、人生の終幕を自分なりに懸命に生きる話。

著者が、自身の父を叔父の最期に拂拭されて綴った。


どうしても、お涙頂戴に成りがちな、題材であるが、決して暗く、湿っぽいだけではない。

また、著者の活動から想像される、軽い、今風な、非現実的な、ええ格好しいな演出、トーンは、抑えられ(ゼロではない)、人間、男、の恥や弱さも、丁寧に書き込まれている。


筋を追う中で、私自身、少々意外なほど同調してしまい、自分であれば、誰に最後に会いにゆくか、飲みに行くか。誰に、どう遺書を書くか。

そして、様々なもの、ことにどうケジメをつけるか。


慌てず、しかし、ゆっくりもできないなか、しっかりと考え、実行できるか。


主人公の歳を過ぎているだけに、真剣に考える、いい機会になった。


主人公そのものになり、疑似体験することは、小説の醍醐味だが、今回は、いいトリガーになり、現実の自分の上で、中で、考えることができた。


考えてみれば、このトリガーを活かし、残念な告知を待つ必要はない。


家族、父母・兄弟、親友、記憶の奥にいる・ある、人、コト、モノ、を訪ねることも良いのでないだろうか。



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2014年9月14日日曜日

ソロモンの犬 道尾秀介 文春文庫




 ソロモンの犬 道尾秀介 文春文庫


若きベストセラー作家の本。
初めて手にとった。

ストーリーテラーではない。が、コンテンツが充実している。
ミステリーの体裁であるが、中身は玉手箱のごとく。

推理だけではなく、青春、友情、家族、科学、宗教、滑稽、愚か、ドンデン返し、など。
そのドンデン返しも、一度ではなく。
とにかく、一冊で三度も四度も美味しい。

それを、「是」とするなら、素晴らしいが、個人的には、ブレに思え、読後感に、爽快さや切なさや重さのような、統一された何かが捉えられなかった。

あくまで私見だが、主軸の柱は一本がいい。
何本もいらない。

では、この本が面白くないか? と云うと、全くそういうことはなく、非常に面白い。
作家の才能や、ともすれば、詰め込み過ぎの咎を、そう感じさせず、うまく、リズム感よく、まとめている技量も確かで、驚きすら感じる。


感動した! 素晴らしい! もう一回読みたい!!

と云うものではないが、十分に読み応えのある「作品」である。

自分の好み、読書感が確立されておらず、楽しみみたい、と思う方にはたまらない仕上がりになっていると思う。


もう一冊くらい、この作家の本を読んでみてもいいな、と思う。




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2014年9月7日日曜日

震える牛  相場英雄 小学館文庫



震える牛  相場英雄 小学館文庫

 


この人の本を初めて読んだ。

ベストセラーらしい。

そう聞くと、斜に構えてしまう。

結果、すごく面白い!

単なるミステリー、警察小説ではない。

謎解き、人間模様、どんでん返し、など一定の要素を踏まえつつ(実際は、犯人の動機づけには、若干、あれっ? と思う由もあったが、そこは、この本の主題ではない、と甘目にみる)。

本質は、経済・時事問題を提起する、むしろ、そこの信憑性、問題の重さに重きをおく、新たなスタイル。

私自身が、中年のオッサンで、ビジネスマンだから、尚更かもしれないが、親近感があり、ともすれば、フィクションであることを忘れてしまう。

他の本も読んでみたいと思った。


「震える牛」の意味が幾つかかけられていて、なるほど、と、納得できる。


エピローグが、熱く、正義感にあふれていて、だからこそ切ない。


ありきたりでない、ミステリー小説をお求めの方。お勧めです。



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