成りたろう 本 映画 切手 を語る: ■ 病気と作家と個性

2012年12月10日月曜日

■ 病気と作家と個性

個人的な話で恐縮です。

ここ1ヶ月ほど、Blogをお休みしていました。

実は、帯状疱疹と云う大人の水疱瘡みたいな病気を撃退するべく、あれやこれや。ようやく、今日午前、ほぼ快復と医者に云われました。当面、傷痕の快癒と残る神経痛とのお付き合いです。

この間、相応に強い薬の影響もあり、中々仕事がはかどらず。プライベートでも安静優先の生活でした。

さて、過去にも病気と闘った作家が多々いますね。

晩年の正岡子規など、あまりに有名で、小説、ドラマ、映画などでご覧になった方も多いのでは。

瑣末な体調不良でも支障の出る、私のような軟弱者と違い、フィジカルな強さよりも、精神的な強さ、志の高さに感銘をうけます。こんなときなので、改めて凄さ、悲壮さを強く思う次第です。

そんな中でも、今回は、吉村昭を紹介したい。故人ですが、現代作家であり、私自身がフリークなので。

吉村さんは早くに両親を病気で亡くされ、自身も肋膜炎、肺浸潤で長く療養。結局、胸郭成型手術で左肋骨を5本切除されています。

この為、大学も中退、後遺症で長く苦しみます。
初期の作品は、どうしても、この現実と向き合う内容が多く、濃く。私小説としては習作時代から高い質を備えています。実際、芥川賞候補に幾度もあがっています。

余談ですが、カミサンも作家で、私の好きな、津村節子。こっちが、ノミネート一発目で芥川賞を受賞してしまう(その前に直木賞3回ノミネート歴あり)。吉村さんは両賞を受賞していません(後に太宰賞受賞で文壇に)。

この時期の氏の生き方や作品も強烈な、重い、「個性」です。

が、ようやく、成人し容態が落ち着いてからが、真の「(第2?!)個性」が目覚めるわけです。

綿密な気の遠くなるような取材を基に、「記録文学」「ドキュメンタリー文学」とも云うべきジャンルを作ってしまう。歴史小説ではない、ノンフョクションでもない。個性を新ジャンルにまで昇華させてしまうのです。

それは、作風の激変にも明らかで。

想うに、自身の幼少期から、動くに動けない不安や鬱憤、隣り合う「死」への恐怖から解放され、自由になった自らの「足」で動き、取材できることは、ともすれば、苦労ではなく、生への確認、喜びだったのではないでしょうか。

水を得た魚・・・とはあまりに手垢のついた表現で恐縮。ですが、まさにそのような運動・行動の成果である情報が確かな筆力と結びついて、それは、「文学」になったのだと思うのです。

とにかく、面白いので、読んでください。推薦図書は、数多ありますが、「戦艦武蔵」「高熱隧道」「破獄」「光る壁画」など。もう少し歴史モノに傾倒した、「漂流」「間宮林蔵」「長英逃亡」。そしてご自身の弟さんの最期記「冷い夏、熱い夏」など。枚挙にいとまがありません。

さて、ここまで、フィジカル面での闘いを書いてきました。

実は、それよりも大変な戦いがある、と私は思うのです。

健康的に致命傷ではない状態は、裏をかえせば、療養の自由な時間が確保できます。習作や読書にはあてられる貴重な時間と云えなくもない。

無用に、病的に、時間に追われ忙しい現代の日本に生きる我々には、まとまった時間をとれることは稀有です。

ところが、この「人間」と云うのは、不思議な生き物で。

仕事や多忙な生活であればあるほど、寸暇を惜しんで、趣味や娯楽にもめいっぱい励むことができる。仕事も含め、時間利用の効率があがる。

ところが、贅沢にも時間がありすぎると、弛緩してしまう。数多の時間を一定のモチベーションを保ち、効率的に使うことは、実は非常に難しい。

そこに病身なので、尚更、気持ちを持続、集中させることは難しいことであったろうと考えます。あり過ぎることは、「個性」を育まず、むしろ、怠惰との戦いの中、「没個性」に向かってしまう。

これ、ビジネスでも同じではないでしょうか。

時間があり過ぎたり、環境が良すぎて、競争に揉まれていないと、気づくと手遅れなような状態になっている。

器用貧乏、「何でもできます」は、実は悪で。結局、何をしているのか、何のプロか、「没個性」に陥っている。

絞り込んで、ターゲティングして、時間を有効に使い、「XXXの専門家です」「XXX屋です」と云いきること。集中することが、この無用に忙しい時代の「個性」になるのではないでしょうか。

・・・判っているけれど、勇気が必要で、中々出来ないんですね~これ・・・。

時間はないですが、健康であるのならば、弛緩、没個性の危険性をよく再認識して。

自身の個性、USPの重要性について。1ヶ月ほど、薬でぼーっとする頭で、病気⇒作家⇒効率⇒個性は、売りは・・・などと考えを巡らせていました。



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