成りたろう 本 映画 切手 を語る: 【本の世界】多妻の人、もとい、多才の人 「 右岸 」 辻仁成

2018年5月7日月曜日

【本の世界】多妻の人、もとい、多才の人 「 右岸 」 辻仁成



「右岸」上下 辻仁成 集英社文庫 を読んだ。


多才な人である。

最近では、中山美穂の元ダンナ。
やもめ暮らしで、愛息をフランスで育てている健気なパパ。
と目されている。

バンド歴がながく、詩もかく。
小説の経歴はきらびやかであり、受賞歴も素晴らしい。

その内容に、ときに残念で愕然とすることがある反面、賛辞をおしまない、大傑作もある。
ブレの大きさも才能のひとつか。


「右岸」はある超能力者の生涯のお話。
男性主人公の目線から描いたものが、右。
女性主人公の目線から描いたものが、左。
(この「左岸」は、親友の作家、江國香織がかいている)

これを単なるエスパーのSF、フィクションでしょ、ととらえることは早計だ。
また、著名作家の競作による企画モノ、話題モノでしょ、と片付けるのも然り。

様々な読とみ方、感じ方があろうが、私の目からは、極上の恋愛小説としてとらえられた。
しかも、それは、主人公二人の間柄だけではない。
様々な関係、恋愛、愛、が描かれている。

もちろん、男女のそれもあるが。
親子関係。
親友関係。
師弟関係。
歳のはなれた男同士の絆。
人間と自然の関係。
などなど・・・。

美しいものばかりではなく、大きく変容してゆくものばかりである。

実世界でもそうではないだろうか。

人の営みの中で、多くの人が経験している、よくある関係を、丹念に丁寧にかきあげ紡いでいる。そして、その作家の愚直さが、そのまま主人公のそれに重なる。

作家自身の個人的な変遷も、実は、愚直で不器用であるがゆえのものか。

多才と対岸にある不器用さであるとするなら、それは、とても好ましいものに私には思える。

不器用な男女の真摯な人生をあじわってみてほしい。

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