「右岸」上下 辻仁成 集英社文庫 を読んだ。
多才な人である。
最近では、中山美穂の元ダンナ。
やもめ暮らしで、愛息をフランスで育てている健気なパパ。
と目されている。
バンド歴がながく、詩もかく。
小説の経歴はきらびやかであり、受賞歴も素晴らしい。
その内容に、ときに残念で愕然とすることがある反面、賛辞をおしまない、大傑作もある。
ブレの大きさも才能のひとつか。
「右岸」はある超能力者の生涯のお話。
男性主人公の目線から描いたものが、右。
女性主人公の目線から描いたものが、左。
(この「左岸」は、親友の作家、江國香織がかいている)
これを単なるエスパーのSF、フィクションでしょ、ととらえることは早計だ。
また、著名作家の競作による企画モノ、話題モノでしょ、と片付けるのも然り。
様々な読とみ方、感じ方があろうが、私の目からは、極上の恋愛小説としてとらえられた。
しかも、それは、主人公二人の間柄だけではない。
様々な関係、恋愛、愛、が描かれている。
もちろん、男女のそれもあるが。
親子関係。
親友関係。
師弟関係。
歳のはなれた男同士の絆。
人間と自然の関係。
などなど・・・。
美しいものばかりではなく、大きく変容してゆくものばかりである。
実世界でもそうではないだろうか。
人の営みの中で、多くの人が経験している、よくある関係を、丹念に丁寧にかきあげ紡いでいる。そして、その作家の愚直さが、そのまま主人公のそれに重なる。
作家自身の個人的な変遷も、実は、愚直で不器用であるがゆえのものか。
多才と対岸にある不器用さであるとするなら、それは、とても好ましいものに私には思える。
不器用な男女の真摯な人生をあじわってみてほしい。
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