【本の世界】誤算と宥和であやまった歴史 「 戦争の世界史 」 A.L.サッチャー
「戦争の世界史」 A.L.サッチャー 大谷堅志郎訳 祥伝社黄金文庫 を読んだ。
枕詞に、“燃え続けた20世紀”
副題に、“それは大英帝国の凋落から始まった”とある。
裏表紙に、“1941年6月28日、サラエボに轟いた銃声が、半世紀以上も続く悪夢のような連鎖反応を引き起こした・・・。20世紀の総括がせまられる今(本書は2000年発売)、近現代史の大家が「われらが時代の軌跡」を生き生きと描く。待望の文庫化第1弾!”とある。
教科書に載っていない、各国の首脳の人柄、性格、名誉、本音、など個人の所作、判断、が重要な位置にいればいるほど、重要な局面におかれるほど、重大な影響をもつ。
第一次世界大戦では、敗戦国はもちろん、戦勝国においても、「戦争はまっぴらだ」「多少損をしても、平和でいたい」という空気が蔓延していた(二次)大戦前夜。
その空気が悪い方へ悪い方へ転がってゆく。
当事国を危機におとしいれたことは、もちろん。
エチオピア、ポーランド、オーストリア、ユエコスロバキア、ベルギー、オランダ、北欧諸国にとって、とばっちりにも似た、悲劇をもたらす。
人間としての、スターリン、ムッソリーニ、そして、ヒトラーが史実で語られている以上に恐ろしく、そして、空前の人でなしであったのか。
お人よしで理想家のウィルソンの苦悩。
優秀なのだろうが平和ボケし、宥和を望みすぎた、ダラディエ、チェンバレン。
逆に、平和な時代であれば、トップにならなかったであろう、チャーチル。
表舞台にもでず一軍人で終わったであろう、ド・ゴール。
時代は、スターリンやヒトラーという怪物の前に、この二人の異能を求めたのである。
できれば、彼らが能力、才能を発揮する必要がない時代が、平和なのだが、強く強く必要とした。
それも、最終局面で民主主義世界がファシズムに敗北する瀬戸際において。
奇しくも、ファシズム以上に警戒し、そして、敵視していた、コミュニズムとの連携をせざるをえないほど、ファシズムは強大なものになっていたのである。
スターリンにとって、ヒトラーが独ソ不可侵条約をやぶって進撃してきたことは、ある意味、民主主義世界との距離を縮め、ソ連の土台を築くことができた。敵の敵は味方。怪我の功名というべきか、歴史において、大きな意味をもつ。
戦勝側にまんまと座ったソ連は強大になり、大戦後の冷戦の元になったのである。
対岸の火事、個人主義、孤独主義を貫いていたアメリカの議会、世論をルーズベルトがいかにして動かしたのか。
もし、動かせなかったらどうなってしまったのか。
これも、パールハーバーがおこったことで(本書ではなく別情報だがアメリカは日本の動きを察知していたが世論を参戦容認に導くため黙認したとされる)、怪我の功名か、一気に当事者として参戦してゆく。
これは崖っぷちのチャーチル、イギリスにとって最後のギリギリの僥倖であり。
崖から落ちていた、腐ったフランスにとって、回復への一本の光になったのである。
もし、ド・ゴールが強い気持ちでレジスタンスを唱え続けなければ、もし、チャーチルがトップにのぼるのが、少しでも遅れていれば。
そして、ヒトラーが痺れをきらせて、西進(ロンドン攻撃)を休止し、一転、東進(ソ連への宣戦)をしなければ。
そして、日本のパールハーバーが成功しなければ・・・。
全てがギリギリの橋渡りと時代が求めた二人の英雄の強い心、リーダーシップ、アイデアによって、民主主義に勝利をもたらせたのである。
現代のビジネスにおいて、経営・リーダーシップにおいても、厳しい局面であれば、あるほど、異能・異才と強い気持ち、負けない心が重要なことは、同じなのだと思う。
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