「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん 文藝春秋を読んだ。
三浦しをんの2006年、第135回 直木賞受賞作。
20才台女性の受賞はきわめて珍しい。
映画もそこそこヒットし、ここで準主役をした松田龍平が、後に映画で大ヒットする「舟を編む」にも主演している。
どちらもちょっとかわった仕事に懸命にとりくむ姿が描かれ、そこはかとない感動をよぶ。
わけありっぽいまほろ市(モデルは完全に町田市)駅前の雑居ビルに居と便利屋事務所をかまえる主人公と中学時代の知り合い(決して友達ではない)の奇妙な同居生活が舞台。
二人とも過去に傷や嫉みを持つが前向きに生きようともがく。
そして、忘れられればよいが、忘れられないコトに対して答えを探し続けている。
女性作家であるが男性の主人公の気持ち、心のひだをよく描けていると感心するが、これは、男性ではなく人間に共通するものなのだなと気づく。
底に流れる逃げることのできない重いテーマを軽妙なユーモアと少しホロリとする温かさで包みながら物語は進行する。
そして突然訪れる崩壊・・・。
しかし、読者の期待通り、それは逆転の希望につながってゆく。
個人的に長く本棚(読みたい本が常時20-50冊程度積まれている)にあったものを、思うところあって読んでみた。
期待通りの温かさと切なさにつつまれ、続編も是非読んでみたいと思う。
ちょっと疲れたときに元気をくれる一冊だと思います。
表紙のイラストも読後に、なるほどとうなずける素晴らしいトーンをもつ。
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