成りたろう 本 映画 切手 を語る: 誘拐児

2014年8月18日月曜日

誘拐児


 誘拐児 翔田 寛 講談社文庫


 

一気に読んでしまった。

王道の推理小説である。

が、単純ではない。でないと、松川驚かない。

そこには、戦後日本の混乱、苦節を背景に、人間の最も汚い、えげつない部分と、最も尊く、美しい部分を対比してみせてくれる。

しかも、ハッキリと勧善懲悪で悪の人間と善の人間を対比させながら、並行して、一人の人間の中にも、どうしようもなく存在する善と悪、背反する存在と葛藤を鮮やかに描いてみせる。

サイドストーリーとして、若い二人の信頼・愛情の揺れ、と結束。

刑事二組のネガティブなライバル関係、しかし、双方とも、その真摯な姿勢に嘘はなく、誠である。

単なる犯人捜し、事件解決、が主役ではなく、それを軸に浮かび上がるのは、人間の本質である。

人間関係に疲れたとき読むと、醜悪で凄惨な事件の重さのかげから垣間見える、最後に味わえる人間の尊厳に救われるかもしれない。


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