成りたろう 本 映画 切手 を語る: 流石の小説 宮本輝「私たちが好きだったこと」

2014年7月7日月曜日

流石の小説 宮本輝「私たちが好きだったこと」

宮本輝が好きだ。

氏のデビュー、中学校の頃から。

「大阪」に根深いこと、映画も、いい出来だったこと、も大きい。


しかし、多くの本に接し、こちらが無用に目、耳、口達者になってくると、それだけでは続かない。

もっと深遠で、崇高で、プロフェッショナルなものを兼ね備えていないと、長い付き合いは出来ない。

しかも、作家も食える=ある程度世間や、一般読者のレベルに迎合するとなると、更に、その、「質」を保つことは至難の業・技で。

成し遂げている作家は、残念ながら、かなり少ない。


さて、氏の多くの本を読破しているが、一冊、本棚に長く眠っていたものがある。

 「私たちが好きだったこと」 だ。


さしたる理由はない。

題名、装丁からくる先入観から。

「優駿」「青が散る」のような蒼いイメージをもっていたので、”その気”にならなかっただけだ。


今回、何となく手にとって読んだ。

最初は、予想通り、、、であったが、その色は、意に反して、どんどん変わってゆく。


人間の深い業、どうしようもない現実、が、いつもの絶妙なテンポで進むうち、引き込まれていった。


蒼いなどととんでもない。

人間が、落ち込んだとき、生きる意義に迷ったとき、是非読んで欲しい一冊。


ビジネスの話をしても致し方ないし、いささかこじづけ臭いが、現在の自分の行っていることが、単なる金ではなく、どういう意味を持っているのか、を再認識できるいい機会となった。

悲しい話だが、読後の気持ちは健やかになれる。


これだから読書はやめられない。

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